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福井家庭裁判所 昭和29年(家)1325号 審判

申立人 福井県知事 小幡治和

事件本人 和島美津子(仮名) 昭和二○年○○月○日生

和島一郎(仮名) 昭和二二年○月○日生

主文

申立人が事件本人、和島美津子、同和島一郎を福井市○○○○厚生園○○寮(児童福祉法第四一条に規定する養護施設)に入所させることを承認する。

(家事審判官 吉田彰)

参照

事件の実情

1 事件本人は父福島礼一、母千サとの間の長女並に長男として昭和二十年十二月四日及び昭和二十二年三月四日に出生した。

実父は居所不定であつて、昭和二十三年六月頃に、現在本児等が居住している福井県坂井郡高椋村牛ケ島に来住したが、その後は転々として諸所を歩き廻り、昨年十月に大阪に赴く、その当時は大阪市生野区鶴橋北ノ町三丁目一三三吉田庄内井上方に寄寓していたが、現在は住所不明である。

なお実父は本児等の出生以前より非行が多く、昭和十年十月十五日に業務横領罪、昭和十五年十一月十九日に窃盗罪、昭和十七年十二月十六日に詐欺罪、昭和二十六年九月九日に同じく詐欺罪に処せられる等いくたの前科を有している。

実母福島千サは昭和二十四年二月子供とともに現住地に来住、生活をしているが、昨年十月夫が大阪方面に赴いてからは、全々勤労の意慾を持たず、毎日徒食に明け暮れている為に、ついに生活費に窮するようになり、本年初頭より本児等姉弟をして附近部落を物貰いに歩かせる等の行為をなさしむるに至つたものである。

2 本児等は実父の行方不明、実母の怠惰等から来る家庭困窮のために、昨年の九月より学校へも行くことも出来ないで、ずつと長期欠席中であるのみか、本年の初め頃から母親に命ぜられて近隣部落を物貰いをして歩く等の行為があつた外、最近は窃盗事件を引起す等、たえず問題行動をくり返すのは多分に、家庭環境の貧困からくるものと思料されるので、本児等姉弟の福祉上家庭において監護させることはまことに不適当と思はれるから、この際実母の許から引離して強制的にでも児童福祉法に規定する児童福祉施設の養護施設に収容保護することが最適の措置と判ぜられるものである。

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